トレモロホリディ

なんだかむなしくなって俯いていると、湊君がパッと顔を上げた。


「美菜ちゃんはあんなに料理が上手で、いつも笑顔でお客さんを迎えてるじゃないか。

美菜ちゃんの笑顔に癒されている人、沢山いると思うよ。

すごいじゃん」


「なっ、それを言うなら湊君だって。

湊君ってお店にいる時、普段の数倍キラキラしてるよ。

そんな湊君に、女の子達みんなうっとりしてたし。

湊君と話せるだけで、女の子は幸せな気持ちになれるんだよ。

それってすごいことじゃない。

誰にでも出来ることじゃないよ」


「俺はそんなことない。

美菜ちゃんはすごいけど」


「ううん。私なんて、田舎者だからほっとするだけじゃない?

湊君の方がすごいって」


「いいや!そんなことない」


自分はたいしたことない、あなたの方がずっとすごい。


お互い何度もそう言い合っていると。


なんだか次第におかしくなってきて。


顔を見合わせてプッと笑った。