トレモロホリディ

それ以来、なんだか魂が抜けたみたいになって。


あんまり仕事にも身が入らなくなっていた。


食欲もないし、休みの日は部屋でただゴロゴロばかりしてた。


そんな俺を見た寮の先輩が、すごく心配してくれて。


俺をよく遊びに連れ出してくれたんだ。


この前も言ったけど、その時に壮真君と知り合ってね。


俺、それまで誰にもめぐるの話をしたことがなかったのに。


初めて人に話したんだ。


壮真君は本当に聞き上手で、気がつけばペラペラと洗いざらい話しちゃってて。


そうしたら壮真君が、俺にこう言ったんだ。


俺の店で働いてみろって。


郊外ではあるけど、この街は芸能人も多く住んでいる街だし、業界関係者もよく店に来るから。


彼女の情報が、何か掴めるかもしれないぞって。


俺ね、彼女がいなくなってから、毎日のようにネットで彼女の名前を検索したけど、全然手がかりなんかないし。


彼女の実家や友達に電話したりもしたけど、連絡先を教えてはもらえなかったんだ。


俺には絶対に居場所を教えないように、彼女が根回ししていたみたいで…。


だからもう、正直お手上げ状態だったんだ。


でも壮真君の店にいれば、もしかしたら彼女の情報が手に入るかもしれない。


そんな淡い期待だけを持って。


バーの店員になろうって、そう決意したんだ…。