トレモロホリディ

「見たって全然構わないよ。

気にしないで」


湊君が向かいのチェアーに座って、にっと口角を上げる。


「ここに描いていたことは、すっかり忘れてたけど。

別に見られてマズイものじゃないから…」


「そ、そうなの…?」


湊君がそう言ってくれるなら、とりあえずホッとしたけど。


でも…。


ちょっぴり気になるな。


この子は好きだった人?


それとも彼女さん?


聞いちゃ…ダメかな?


私にはそんなこと聞く権利…、ないのかな…。


「あの…。

この絵の人…、すごく可愛いね。

実在する人…なんだよね?」


湊君の理想の女性だったりして…。


そう思いたい自分もいたけれど。


俯く湊君を見ていたら、やっぱりこの人は実在するんだなと、すぐにわかってしまった。


湊君は一度深呼吸すると、静かに口を開いた。



「この子はさ…、




俺の





彼女だよ…」