トレモロホリディ

「俺、筋トレで汗かいてるから、シャワー浴びてくるね。

美菜ちゃんはゆっくり食べながら見てて」


「うん」


湊君はそう言うと、お風呂場へと向かった。


私は続きのページをさらにめくり、2冊目に差し掛かっていた。


それにしても…。


本当に上手だなあ。


夜の仕事だし、あんまり時間がないのかもしれないけど。


この趣味を続けないなんて、本当にもったいない。


二冊目も見終わったので、三冊目を手に取る。


その表紙には『3年2組 遠野湊』の文字。


おっ、これは高校時代のスケッチブックだなー。


早速開いてみると、美術部で描いたのだろうか?


果物や彫刻のデッサンが出て来た。


「うわ~、上手いなー」


鉛筆一本で、こんなのが描けるんだから、本当にすごいよね。


まるで白黒写真みたい。