トレモロホリディ

さっきまであんなに色々と考えていたのに、結局こうして湊君の部屋に来てしまう私って…。


「今日、実はね。

猫に会いに行ってたんだ」


寝る準備の整った湊君が、ベッドに座りながら言った。


「猫って、あの茶虎の猫ちゃん?」


「うん。

あの猫ね、壮真君のお客さんの30代のご夫婦が引き取ってくれたんだけど。

昨日の夜、お店に二人が飲みに来てたから、あの猫元気ですか?って聞いたんだ。

そうしたら見に来ていいよって言ってくれたから。

だから一旦帰って買い物したものをアパートに置いて、ご夫婦の家に行って来たんだ」


「そうだったの。

あの猫ちゃん、元気だった?」


「うん。元気そうだけど、ちょっと馴染めてないみたいだった。

そのご夫婦、子供がいないから、猫を沢山飼ってるんだよ。

アイツ、チビだしね。

大勢の猫の中で、ちょっと浮いてる感じはしたかなー」


そうなんだ。


あの猫ちゃん、猫が沢山いるおうちに引き取られたんだ…。