「私、この春大学を卒業したばかりなんですけど。

就職先も見つかってないし、でもだからって田舎に帰るわけにもいかなくて。

なんとかここで生活していかないといけないんです。

勤務時間なんて全然気にしませんから、私を雇っていただけないでしょうか?」


必死にそう話すと、彼女は組んだ両腕をカウンターに置いた。


「あなた大卒なの?」


「あ、はい…」


「それなのに、こんな小さな定食屋でいいの…?」


「もちろんですよ。

お味噌汁は丁寧にダシがとってあるし、ぬか漬けもすごく美味しかった。

温かいお茶もハンバーグも、全部に心がこもっていてすっごく感動したんです。

それなのにお財布に優しいお値段で。

私、こんな美味しい定食を食べたのは初めてです。

ここがいいんです。

ここで働かせてくださいっ」


そう言って頭を下げた。


しばらく沈黙が続いていたけれど、


急に女性がクスッと笑った。