トレモロホリディ

先輩が帰って静かになった玄関で。


なぜかミナト君は私を抱きしめたままだった。


私の膝がガクガクしていて、動けないのもあるんだけど。


ドキドキが止まらないのに、さらにこの沈黙。


この状況、一体どうすれば…?


「ミナちゃん…」


「は、はははいっ」


思わず声が上ずり、ピンと背筋が伸びた。


明らかに動揺しているのがバレバレで恥ずかしい…。


「ごめ、ん…。

ちょっとやり過ぎた」


ボソッと呟くミナト君。


やり過ぎた=キス?


ひゃぁぁぁ~。


もう顔が上げられないーーー。


「だって、すげー腹が立って。

ミナちゃんのこと、田舎者だとか、バカだとか。

やっぱアイツ、ミナちゃんのことを下に見てるんだなって思ったら許せなくて。

そのくせ勘違いヤローでしつこいし。

ああでもしないと、帰らないと思ったから」


ミナト君の言葉に、胸がキュンと音を立てる。


嬉しい…。


そんなふうに言ってもらえて。


「ありがとう…。

ミナト君が来てくれて、本当に良かった。

これでもう、先輩ここには来ないと思う 」


プライドの高い人だもの。


結構屈辱だったはずだし、きっと二度と来ないよね?


「いや…、それはどうかわかんないよ?」


「え…?」