トレモロホリディ

顔を引き攣らせていると、何を思ったか、ミナト君が靴を脱いで部屋に上がり込んで来た。


そして先輩の手をパシッと振り払って、私を自分の背中に隠した。


「何か勘違いしてない?

悪いけどさ、今ミナちゃんと付き合ってるのは、俺なんだよね。

だから、さっさと帰って」


ミナト君の言葉に、私も先輩もギョッとした顔でミナト君を見た。


ミナト君、嘘をついてくれてるんだ。


先輩を追い返すために……。


「付き合ってる?

あんたと、ミナが?」


信じられない。


そう言いたげな先輩。


まぁ確かに。


私とミナト君がカップルって、相当無理があるでしょうけど……。


「ミナ、お前ホストに入れ込んでんのか?

バッカじゃねーの?」


ホ、ホスト?


何言ってるの?


「ミ、ミナト君はホストじゃないですよ!」


「こんな男前が、お前みたいな田舎者を本気で相手するわけないだろ?

ちょっと優しくしてもらったからって、調子に乗ってんじゃねーぞ。

なんでこんなボロアパートに住んでんのかと思ったけど。

節約して、このホストに貢ぐためなんだろう」


「違いますよ!

もう、いい加減にしてください!」


なんてことを言うんだろう。


その想像力、もっと他のことに生かせばいいのに!