―――――シーン


くるみが行ってしまった後、私は俯いてアスファルトに目をやり、立ち尽くす。


私と堂本くんの間に言葉のやり取りはない。


まだエントランスにも入ってないのにこの雰囲気って・・・


謝るんだったら今しかない。


でもなんて言おうか?


こうしている間にも沈黙は続いている。


そして未だに私はアスファルトに目をやっている。


どうしよう・・・こんな時は何か無難な当たり障りのないことから話しかけた方がいいのかな。



でも話しかけることで仲良くしたいと思ってると、つまり好意的だと捉えられても困るしなぁ・・・


あたし全然その気ないのに。


どうしようかとあれこれ悩んでやっぱり今謝ろうと決めた。


「あの!」


「あの!」


この男と声が重なった。


上から視線を感じる。


堂本くんが私を見ているのがわかった。


ゆっくりとアスファルトから顔を上げ堂本くんのネクタイのあたりまで視線を上げ言った。


「お先にどうぞ」


「いえいえ、そっちこそ」


譲り合いになってまた沈黙になってしまった。


もう少し顔をあげると、堂本くんと目が合った。


「うふふ」

       
「あはは」


その途端、二人同時に笑い出してしまった。


なんかこういうのって少女マンガ見たい。


「行こう」


堂本くんが言った。


「そうだね。行こっか」


私はその言葉に従い歩き出す。


でも堂本くんは動かない。


次の瞬間堂本くんに腕を掴まれた。


エッ!?何!?