片思い

「ん?ああ、知らんやろけど小山柚紀那て言います★」

「茜急ご?はやく、教科書借りに行かなきゃ!」

やっぱり柚紀那だった事がショックで話を遮り、茜の腕を掴んで教室から出た。

「どしたん?急がんでも大丈夫なのに」

「そうだった?ごめんにや〜」

「何それ!」

軽く何もなかったかの様にその場を流し、
3-Cへ向かう。

「あっれ?莉奈がいないや〜」

「こっそり借りちゃえ!」
「だねっ!ごめん!」

莉奈という人の机からこっそり現国の教科書を借り出して、胸ポケットからメモ帳を取り出し、置き手紙を書く。

急いで教室に戻ると、真哉は携帯電話の画面を見ながらにやついていた。

教室の隅で、茜と少し喋ってチャイムと同時に席に戻る。

「起立、気をつけ礼」

「お願いしまーす」

学級委員の号令で授業が始まる。

「さっき、何にやついてたの?」

授業の合間に真哉に話しかけてみた。

「柚紀那が今日迎え来てくれるって♪」

「柚紀那と付き合ってたんだね。知らなかったあ」