その日、俺は綾子に電話をした。


すると、綾子は明日どうしても会いたいと言ってきた。

神崎のこと、綾子のこと、聞きたいことはたくさんあったが、俺はそれを直接会って話をしたかったし、
もちろん綾子もそうだと思ったから、その日は電話で何も聞かずに通話を切った。

折角大谷サンに補強をしてもらったのに、少し無駄になってしまったな、と心の奥で思いながら、俺は帰路についたのだった。

しかし、自宅に着くまで、あまり身体が痛まなかったのは、大谷サンの治療と補強のたまものであると思う。
やはりこれはいつかお例をしなければならないな・・・。





綾子に呼び出された今日は金曜日だったが、学校は午後をサボって綾子の学校の近くに来た。


綾子の学校は俺の友達の友達と同じ学校で、俺の学校から大分離れたところにある。

徒歩で30分ほどの距離だったが、俺は準備運動のつもりで歩いた。


そこは、土手がある場所で、近くに工場があり、学校はその土手を沿って歩いたところにあるそうだ。


そこで俺は綾子を30分ほど待った。





綾「照史くん!」

パタパタと可愛らしい音をたてて、綾子が走ってきた。

俺はそれを見て、すこし笑う。


照「そんなに急がなくてもいいぞ。」


綾「ううん。待たせたのはわたしだし・・・」

照「いや、さっき来たばかりだから。気にすんな。」


頭をポンと撫でると、綾子は可愛らしく笑った。


綾「ね、ちょっと歩こっか。」








綾子はいつも通り、可愛らしい笑顔を浮かべ、俺の隣を歩いている。

やはり、綾子は神崎に付け回されているだけなのだ。

俺に向ける笑顔は、こんなに素直で可愛らしいものなんだから。









少し歩いて、気が付いた。


照「綾子?ここは工場だぞ?」

綾「そうなんだけど・・・あのね、ここ、今は使われてないんだよ。」

照「ふぅん・・・。」

綾子は工場の方に足を進める。

俺は、少し疑問を持ちながら
綾子についていった。






「よぉ。昨日ぶりだな。」

カシャン、と音がしたと思うと、そんな声が聞こえた。

驚いてそちらに目を向けると、そこには



「神崎・・・。」

昨日殴り合いをして、俺を打ち負かした、神崎がいた・・・。




何故、神崎がいる・・・?

その神崎の後ろから、ゾロゾロと男どもが出来てきた。

その男どもは、おそらく神崎の仲間だ。



一体今のこれはどういう状況なんだ。


いや、それよりも、今は神崎が目の前にいるんだ。
綾子を早くこの場から離れさせないと・・・







綾「神崎くん!助けて!」

照「綾子!?」


綾「私、脅されてるの・・・!」


照「!!?」












そこからのことは、スローモーションのように見えた。


綾子が俺のもとを離れ
神崎の手に己の手を絡ませて

俺を怯えた目で見つめた。



俺は何も頭が回らず、
気が付けば神崎の仲間に囲まれていた。



神「昨日忠告はした。今回は・・・袋叩きにされても、文句は言えないな?


ストーカー野郎」




神崎のその言葉を最後に、俺は身体中への痛み以外、何も感じることはなかった。



















そして、俺が再び目を覚ました時、昨日と同じ天井を見上げていた。