年下の彼氏が優しい件





彼は話を簡潔にまとめた形で話してくれた。

綾子さんという人は、彼の彼女であったのに、他の男の人に彼のことを付け回してくる奴だ、と言っていたらしい。
そして、その確認をしようとしたら、その男の人とその仲間の人に殴られたらしいのだ。

いわゆる暴行、だ。

彼は、綾子さんの行動にショックを受けたようで、頭がうまく回らないらしい。

彼女のことは疑いたくないらしいが、それでも、疑ってしまう自分が怖いと言う。




その綾子さんが、二股をかけていたことは明白だった。



話を聞いただけでそう判断するのは、早急だし、彼の主観で話であるから、それが真実であるかは分からない。
しかし、彼が彼女に尽くしていたことは分かるし、好きだったこともわかる。

好きな人を疑いたくない気持ちは、自分に恋人がいたことがないから正確に共感できないかもしれないが、
私も疑いたくない。できれば信じていたい。



それでも…



照「それでも…、脅されてるって言葉には、傷ついた、な…。」

『…………。』

言葉が出なかった。


彼の気持ちは彼にしか分からない。

これは話してスッキリする内容でもない。

安易な言葉で慰められても、それを彼は欲しいと思わないだろう。



照「…俺は、すげぇ好きだったんだ。」

照「毎日電話して、綾子の声を聴いて、俺はあいつに頼りにされるとすごくうれしくて、さ…。」

照「でも…もしかしたら、綾子は俺のことをそれほど好きじゃなかったのかもしれない。」

照「だって、そうじゃなきゃ……」


彼はそこで言葉を切り、
布団の上で弄んでいた自らの指を見つめた。

指先は、少しだけ震えていた。

私よりも身長が高くて、大柄な体をしているのに、
彼は何かを我慢しているかのように、
信頼していた恋人に裏切られたかもしれないという事に、

耐えていた。





『……君は、』

照「………?」


『君は、綾子さんのことを今も信じているの?』




私のその言葉に、彼は顔を上げた。

前髪で少しだけ隠れている瞳は、少しだけ曇っているけれど、それでも…


照「…少し、考える。」


『…うん。』


きっと、彼の瞳は曇らないだろう。








何故なら、かすかに優しい目をしていたから。























それから少しして、

彼はお粥を食べて腹が膨れたからか、再び睡魔に負けて寝てしまった。


私も客人用の布団を出して、彼に何かあった時のために、ベットの側で少しだけ寝た。



彼の食べた後の食器を洗ったり、洗濯機に入れていた服を出したりしたから、私が寝るころには、外は少しだけ明るくなっていた。






そして、土曜日の朝がやってきた。