目が覚めると香の腕のなかだった。久しぶりの暖かさに身を寄せると香が寝ぼけながらも薄目をあけて私を見た

「あー…悪い…暑かったよな…」
「いや、ええよ。うち…これ好きやけん」
「…ならええんやけど…
まだ電気ついてへん…みたいやな。やっぱ田舎は遅いな」
「せやな…香ちゃん、おはよう」
「おはよ。…あ、寧の携帯光っとるよ」
「本当?…香ちゃんのもだ」

私は自分の携帯をスライドしてメールを開いた。母からだった。件名は「ごめんなさい」…どうしたんだろう。

To:母 ごめんなさい
昨日の地震で停電が起きたのしってるよね
あたし、焦って避難したの。そしたら家のオートロック全部締まっちゃって鍵がないの。復旧とかでも時間かかるし3日はかかるらしいの。悪いんだけど香くんに泊めてもらってください。お母さんは友達の家に行きます。お金が必要ならメールください

母も大変な事になっているようだ。友達と言っていたから一番仲の良い郡山さんだろう、と思う。母は大丈夫なようだ。私の父は既に他界していて、兄は隣の県にいるので被害はない。
香に聞けば出張のまま土砂崩れで帰れなくなったから、と父から連絡だったとのこと。私は香に事情を伝えた

「…だから、泊めてもらえへんかな…迷惑やとは解っとるんやけど」
「ええよ。多分二人は帰るやろうし、何時も通りで安心するわ。…今日日曜やけど明日、学校やわな…」
「休みやろ。…な、香ちゃん」
「何や」
「…青春っぽくてええな、こういうの」

私は笑いながら香ちゃんの胸にぐりぐり頭を押し付けた。香ちゃんは笑いながら私を抱き寄せた。夏場だから暑いのに、はしゃいでても暑くない。外がお天気雨だからだ

「…ええなァ」
「うん。…さて、二人が起きんうちに飯…あーどうしよかな。停電…」
「アホやなあ、停電直ったから携帯使えたんやろ」
「そ、そか!朝飯作ろ!」
「おん!」

。。。

凌side

昨日の夜中、寧が風呂に入ったあと少ししてから地震が起きた。酷い雨だったので土砂崩れもあるだろう。俺と花は20秒で布団を引いてくるまった。少しだけ怖いねと話をしたあと、ぐっすりと寝てしまった。

朝、今起きてポケットに入れたままの携帯を見ると8時前。メールを開くと両親と弟達が親戚の家に行ったので昼に迎えに来るとのことだった。了解メールを送って起き上がると花も同じ状況らしかった。足音が聞こえて麩が開くとエプロンをつけた香が「起きろ!朝飯!」と叫んでいた。

平穏じゃない朝が始まった