プルルルル ッ

夜中に電話が鳴り響き、先に起きた私は香に一言告げて電話に出た。

「はいもしもし、甘田です…」
「寧ちゃんか!?ああこの際あんたでもええ!!」
「…?…香ちゃんのお父さん?」
「せや!!あんなぁ香に伝えてほしいねんけど!父さんが土砂に巻き込まれて行方不明んなったんや!!」
「えっ…!?お、お爺さん…住職さんですか?」
「そう!数珠がない言うて探しに行った思うたらおらへんねん!!ほんでまさかと思ったら新しく崩れた土砂の傍に…あの人のメガネと数珠が落ちてたんや…」
「そんな…」

「…どないしたん…騒がしいで…」

「香ちゃん…!あっ、お父さん今代わります」
「何…父さん?…あーい…?…は?ホンマに言うてんの?…はあ、…わかった。うん、は、わかった。…じゃあ」

香は受話器を置くと頭を押さえながら私を見た。どうした、と聞くと腕を掴まれて寝室に戻った。香は電気をつけると布団のうえに座り、向かいに座れと言うように布団を叩いた。素直に座って香をみた

「…爺さん…助かるかわからへん」
「うん」
「老体やし…体力ある訳でも無いし…」
「うん」
「どないしよう…俺何もでけへんやん」
「…せやね」
「俺…爺さん大好きやったのに」
「うん 」
「行方不明て…死んだも同然て事やん…」
「…うん」
「…俺…行くこともできへんねん…」
「…なら、祈るしかないやん」
「…祈る?」

香の問いかけに顔をあげて頷いた

「こういう不利な時って、何もできへん時って、神様にお祈りするやん。幸い、香ちゃん宅は寺やし、神の加護とか!」
「…うん、できる限りの事はやるわ」
「せや。…落ち込んだら言うてくれな。励ましてやるんだから!」
「なら励まして」
「早速やなオイ…はいはい寝るよ」

私は電気を消して布団に香を押し込めて、私も隣に潜り込んで香に抱き着いた。背中をリズミカルにポンポンと叩いていると香はそのまま眠りに落ちた。Tシャツの裾を引っ張ってから香に寄り添って目を閉じた。

見つかってるといいな、おじいさん