二人で作った朝ごはんを食べると、私は香に駆け寄った

「香ちゃん」
「おんー?」
「あの、何度も悪いんやけど…服、貸してくれへん?…あ、このままでもええねんけど…動いたら中下着やからさ」
「あーええよ、好きに使い。なんなら母さんのでも」
「ええよ!大人の人のは借りれへん…!香ちゃんのがええねんて!」
「せか?…んなら箪笥から好きなん取り」
「ありがとう!」

私はジャージを下に履くが長いので膝までまくって安全ピンで止めて最長まで腰の紐を引っ張った。唯一の洋室、ダイニングに入ると麦茶を片手にテレビを見る男子2人。花の行方を聞くと、準備でき次第帰るらしいのでせめてとお風呂に入り、片付けをしているらしい。

「凌くんはええん?」
「いや、昼に迎え来るねんて。片付け終わったからシャワー浴びて帰るわ」
「なるほどね。帰り道気をつけや?」
「おん。寧は?」
「母さんが友達の家に避難したらしいんやけど、オートロックで家に入れんで世間様も忙しいから後回しにされて鍵作るかどうか」
「…やっぱ田舎やもんなぁ」
「おん…」

花がお風呂からあがってきたので麦茶を入れてあげ、コップを返されるとせわしなく「ごめんね!」と荷物を持って出ていった。迎えが既に来ているのだろうか?

「…忙しいなあ、花」
「せやな。…まあ、停電とか起こったもんな」
「…ま、ええわ。凌くん昼飯食べる?」
「いや、ええよ。母さんたちと食べる」
「ん、ならまだええか」

暫くしてお昼前になると凌の携帯が鳴り、外からクラクションが聞こえた。凌の親らしい。凌も「ありがとう!またな!」と出ていった。

「…香ちゃん、どうしよっか」
「お前ん所は住所わかるからええけど…俺は金ないしなぁ」
「ああ、お金はうちの所から工面するわ
泊めてもらうし…この状況だから」
「…お言葉に甘えさせて貰うわ。…っさてと…俺飯作るから洗濯モン頼むわ」
「はいよー」

洗濯機から洗濯物を取り出し、外が小雨なので客間に干しておいた。部屋干しだが日照りがいい…お天気雨だからまあ、いいだろう

「香ちゃん終わったでー」
「ホンマ?ちょお味噌汁…あさげ作って」
「ん」

インスタントの味噌汁を作ってテーブルにおいた。二階のダイニングスペースは唯一無二の洋室で、主に団欒のための部屋。

「…できた。鯖と鮭どっちがええ?」
「鮭!」

「いただきます」

二人で被害情報を流すテレビを見ながらごはんを食べた。香と酷いものだねと苦笑いした。ご飯は普通に美味しい。上も下もなく普通だ。香が先に食べ終わったので少し急いで食べて、香に洗ってもらった。皿を拭いてなおして、香がいるダイニングに戻った

「…なあ、寧」
「何?」

香はテレビから目をそらさずに私に話しかけた。

「こんまま…俺達がずぅっと二人で暮らすようになったら…お前はどうする?」
「…せやな、まず困るわ。お金も大人もないんだし…。」
「まあ、そうよなぁ…」
「まあもしもうち等が結婚して、子供できたらそれはまた困るだろうなあ…だって、そんなお金と年齢とか…どうなるんやろうて」
「そら困るわ。絶対俺ら付き合わんめや!」
「せやな!あと皿洗いありがとう!」
「皿拭いて直してくれてありがとう!」

少し変な空気になって笑いあってまたテレビを見た

「こんな時になんやけど…暇やわ」
「そやね…宿題も終わってしもうたし」
「…出かけるにも出かけられへんし」
「…どないしよか」
「…うーん」
「なんか怖ぁなってきたわ…」
「やめろよ俺も怖くなるだろ。…あ、お前膝どないしたんやっけ?」
「あ!昨日そのまま寝てしもうた!」
「絆創膏貼っとけや…ほら」
「ありがとう!」

棚に手を伸ばして絆創膏を取ると私に渡してくれた。膝にぺたりと貼って、ゴミを捨てた。そういえば、と私は香に話しかけた

「…香はお風呂…入んなくていいの?」
「ああ…俺あの後お前と入ったからって嘘付いたんやわ」
「もー…入ってきなよ。まだ昼だし」
「夜入るもんだろうが…ええよ、今日二回洗うわ」
「…ええならええけど。うちも髪乾かさんかったし」
「お前女だろ」
「…前から思ってたんやけどさ、女だろって人種差別」
「うっ」
「女なんだからとか女らしくとか…うちそんなの目指してない!」
「うー…」
「むしろ乙女よりもお嫁さんとかよりも自分らしく生きたいの!やから二度と女なんやからとか言うなよ!」
「あいすんません…」

なんか反省会みたいになってもうたね、と二人で少し笑った