アオヤマさんが慌てて店を出ていったので驚いて、そのとき初めて隣に客がいることにマツエは気がついた。
スーツを着ているが、着られているといった感じのその女は、蕎麦に手をつけることもせず、泣きじゃくっていた。
普段興味のアンテナを張り巡らせている私としたことが、隣の客に気づかなかったなんて、なんたること。
マツエは、ティッシュを差し出した。
「何で泣いてるかは知らないけれど、私なんか働けど働けど暮らし楽にならずで、毎週ここに来て、アキさん相手に愚痴ってるの。でもここでカツ丼食べたら、明日も頑張ろうって元気でるんだよね。」
「ちょっとマツエさん、ここは蕎麦屋なんだから、蕎麦を食べて元気になるって言わないと。」
「いいじゃない、私はカツ丼で元気が出るんだから。」
泣いている女子大生への心配より、自分たちの会話に満足した、髪をいまどきないのではないかと思うくらい染めあげたマツエと、化粧品会社の人間が見たら、うちの化粧品ではないに違いないと祈りたくなるくらい厚化粧をしたアキは、ディズニーランド一家の話に戻っていった。
スーツを着ているが、着られているといった感じのその女は、蕎麦に手をつけることもせず、泣きじゃくっていた。
普段興味のアンテナを張り巡らせている私としたことが、隣の客に気づかなかったなんて、なんたること。
マツエは、ティッシュを差し出した。
「何で泣いてるかは知らないけれど、私なんか働けど働けど暮らし楽にならずで、毎週ここに来て、アキさん相手に愚痴ってるの。でもここでカツ丼食べたら、明日も頑張ろうって元気でるんだよね。」
「ちょっとマツエさん、ここは蕎麦屋なんだから、蕎麦を食べて元気になるって言わないと。」
「いいじゃない、私はカツ丼で元気が出るんだから。」
泣いている女子大生への心配より、自分たちの会話に満足した、髪をいまどきないのではないかと思うくらい染めあげたマツエと、化粧品会社の人間が見たら、うちの化粧品ではないに違いないと祈りたくなるくらい厚化粧をしたアキは、ディズニーランド一家の話に戻っていった。
