心の交差点

店を出たナオミはシンジに申し訳ない気持ちで謝った。
「ごめんなさい、こんなところで時間を潰して食事の支度もせず。」
「いいさ、俺だって鰻重食ってたんだからお互い様さ。」

シンジは、メガネの奥でなくなりそうな小さな目を、少し見開いて、笑った。

「今度からは、一緒に食おうな。いや、やっぱりおまえの料理を家で食いたいな。」
「仕事も辞めるか、変わるかしたら?俺だってまだ給料で家族養えるからさ。」

普段ほとんど会話もなくなっているのに、二人は久しぶりに本音で話していた。