「やっぱり、代わりはできないよ」


教室に戻るなりそう早苗は言った。


保健室で言わなかったのは、保健室の先生がいたからだと思う。


その気配りが嬉しい。


「そういえば、会長と立花別れたらしいよ」


早苗がニコニコしながら言う。


え?早くない?


「早苗……今、何月何日?」


「え?5月7日だけど」


先輩に抱かれてから1週間以上が経ってた。


あれからの記憶が全くない。


あたしが倒れるまでにあった記憶は、先輩に抱かれた日まで……


じゃああたしは今まで何をしていたの?


「兎に角、チャンスだよ。凛!」


早苗はそう励ますけど、今は会いたくない。


そう思ってたのに、


「会長来たよ」


こういう時にかぎって神様は裏切る。


……バかみさま。


「凛、今まで何してたんだ?」


先輩はあたしの顔を覗きこんで目が合った。


咄嗟にあたしは目を背けると、先輩は一気に不機嫌になった。


「ちょっと来てよ」


そう言ってあたしの腕を掴み歩き出された。


本当にあたしは運が悪い。


運が悪すぎる。


生徒会室に連れてこられ、先輩は鍵をしめた。


「先輩?」


「抱かせろ」


猫かぶりの先輩がとうとう仮面をとった。


「いきなり何言って……」


「お前は麻実の代わりだろ?」


先輩の冷たい言葉が耳に張り付いた。


あたしに拒否権はないんだ。


先輩にとってあたしは''代わり''だから。


「……わかりました」


授業があるということを忘れあたしは先輩に抱かれた。


先輩に抱かれて嬉しい。


好きだから。でも、


先輩はあたしを見ようとしない。


麻実さんの名前を何度も言う。


あたしは、先輩の思いを体で受け止めるサンドバッグみたいな存在だっていう事を改めて知らされた。


けど、先輩は激しくはしない。


そこにはあたしに対しての遠慮感があって嫌になる。


「先輩」


「なんだ?」


「思ってることすべてあたしにぶちこんでください」


「は?」


「そうしないと、あたしが嫌なんです」


「………わかった」


そう言うと、今まで以上に律動が速くなった。


快楽なんてものはない。


普通の女ならこれで満足するだろう。


でもあたしは、激しくなればなるほど、悲しくなる。


思いをぶちこんでと言ったけど、ぶちこまれるほど悲しくなる。



行為が終わると先輩は、服を着て生徒会室から出ていった。


ドアが閉まってから思いっきり泣いた。


これでもかって思うほど泣いた。


麻実さんは羨ましい。羨ましすぎる。


あんなかっこいい人に思い続けてくれるんだなんて。