「そうだ。おもいだした。でも、彼も一回私に別れてくれと言われたことがある。」
まだ付き合って間もない時。
「あいつがーー」
「あいつって。」
「私あいつが嫌いやったから。別れるっていった原因は?」
「好きな人できたって」
「相手も見たけど、会社の先輩だった」
「その時別れたらよかったのに」
「あんたあいつのこと嫌いやったん」
「生理的に受け付けなかった」
「今知ったわ。」
「私も」


「あの人そんなこと言うひと?」
「言われたのは事実。」
けど、結局もとに戻った。
あの時は私も好きの始まりやったから。


でもねその後・・・ちょっとだけ仕返ししてやった。
「じゃ あの時、別れたほうがよかったやん」
ちょっと許せなかったことがあって・・・
これは誰にも話はしていないこと。
「でたな悪魔が・・・」
「怖。復讐??」
「ちょっとだけ仕返し。」

「相手は誰」
「・・・」
「誰」
「前の会社の同期」
「ちょっとだけ恋愛」
「でも、最後に残ったのは虚しさだけだった」
「誰かにすがりたかっただけだったのかも」


そして、その後が、さっき話した年上の彼。
「取引先の?」
「そう。取引先」
「既婚者はまずいやろ」
「だから、ごめんなさいと言った」


その後はなんだろう・・・お互い変だった。
でもそこから歯車は狂い出していた。

「そんなに感じなかったけど」
「私は知っていた。あんたが苦しんでいること」
「そうやね。あんたにアリバイたのんだもんね」
「女同志の飲み会にもあいつがついて行くと言ってきたもんね」
「あれだけは辛かった。とことん信用ないのかと思ってた」
「あれはだれでもひくわ」


私をつなげておくために、あいつは、
婚約指輪を買おうとがんばっていた。
必至やった。

その時、言ってはならないことを言ってしまった。


「そんなのいらない」
「私はそんなものもらってもうれしくないって」
「もっと現実をみて」と。


でもわかってもらえなかった。
私が苦しんでいることを。
辛くて泣いていることも。
どうしようもなくてもがいていることを。


一番複雑な気持ちの時、彼に会ってしまった。その彼とまさか結婚するなんて・・・

毎日が楽しくなくて、嫌々帰る道中、目の前に入ってくる電車に乗っていた。
あいつの先輩が・・・。