「唖人について…?
確かに俺達はこの力が
何なのか詳しく聞いた事は
無いし…てかあんたが教えて
くんなかったんだろ?」

キルはそんな事を国王に言った
この二人、どうやら
自分が持っている力を
今まで詳しくは聞かされて
いなかったようだ

「……」

対照的に静まるクローズ
表情から何か知っているの
かも知れない

「唖人について詳しく語らなかったのは
恐れていたからじゃ…」

国王は俯きながら言った

「恐れていた?」

キルは嫌な汗が出るのを
感じながら聞いていた

「唖人について語るには
少し昔話をしなくてはならん
話を聞けばわしが恐れていた
理由もわかるじゃろう…」

国王は顔を上げ真っ直ぐに二人を見た

「時は遥か昔、まだこの世界が
王国などで統治される前の話

まだ国のシステムが無かった頃
世界は平和じゃった…

王国などと言う物は無く
世界の人々は互いが互いを
気遣い、協力し生きていた

そんな世界に異変が訪れた

ある人々が集落を襲撃したのじゃ
平和だった世界に悲鳴が起きた

そやつらは奇妙な力を使い
人々を殺戮していった

当然止める術もなく
人々はただ混乱と恐怖に包まれた

何故殺されねばならない?
私達が何をしたと言うのだ

わからぬまま
殺されていく人々
同じ人の筈なのに
何故こいつらは
こんなことをする?
何の為に?

次第に恐怖は怒りに
変わっていった

そして、何とか奴らの
殺戮を止めるため人々は
立ち上がった

世界は戦火の炎に包まれた」

「…もしかして…その
殺戮をしていた奴等が…」

キルは背中を通る寒気に
息を飲みながら聞いた

「そうじゃ…その奇妙な力を
使う殺戮者達が…唖人じゃ…」

国王は言いたくは無かった事を
告げ、俯いた

「待てよ…!んだよそれ!
どうゆうことだ!」

声を荒げるキル

「…黙っていた事は詫びる…
話はまだある…」

「…ちっ!」

キルは一度呼吸を整え再び
話を聞いた

「人々は武器を手に取り
交戦を始めた

唖人達の数は一万にも
満たなかったが圧倒的じゃった…

血を流し倒れて行く人々
このまま世界は唖人達に
よって潰されてしまうのか

だが一人の救世主が現れた

そやつは唖人でありながら
人々に味方したのじゃ」