忘れたらダメだ。

卯月くんは、恋愛を禁止している側の人。

絶対に彼が私を選んでくれることなんてない。



「……っ」


痛い。

痛い。

胸が、泣きたいくらい、痛い。


今になって気付くなんて、私はどこまでバカなの。

いっそのこと、菊池くんに抱いていた、優しいだけの感情を恋だと勘違いしたままでよかった。

淡い憧れを、恋だと思っていられたらよかったのに。


こんな気持ち、気付きたくなかった。


「モカ……。もしかして、卯月くんのこと」


俯いたまま、一向に顔を上げない私を心配したのだろう、名桜ちゃんが私の顔を覗き込んできて、囁くように不安げにきいてきた。


……名桜ちゃんには、かなわないや。


隠しても無駄。

強がったってきっと、名桜ちゃんにはいつかばれてしまうだろう。


────こくん、と頷いた私は、心を押しつぶそうとする想いの大ききに耐えられなくなって顔を上げた。


「……名桜ちゃん、どうしよう」


絶対に叶わないと分かる恋がこんなに心を締め付けるものだなんて。

恋がこんなに苦しいものだなんて。

私、知らなかったよ。