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「卯月、おはよう」
花見の翌日、俺はこの上なく憂欝な気持ちで登校した。
教室より先に向かったのは、校舎の最上階一番端にある、生徒会室。
ガラッとドアを開けて中に入ると、すぐにはきはきとした声で挨拶が飛んでくる。
生徒会長の西野妃那(にしの ひな)だ。
「……ん」
「ダルそうねぇ」
生徒会室にいたのは、西野だけだった。
窓から登校してくる生徒を眺める西野は、毎日誰よりも早く学校に来る。
肩までの艶(つや)やかな黒髪がとても似合う、和風美人。
けれどそこに男の3歩後ろを歩くようなしおらしさはなく、凛々しさが先に立つ印象を与えるのは、その強い瞳のせい。
「当たり前だろ」
ダルい、なんてもんじゃねーよ。
心の中で呟いた俺の声を悟ったように、西野は「それもそうね」と苦笑をこぼした。
「取り締まるほうもつらいんだって、きっと皆は分かってないんだろうね」
「……」
まるで俺に同情するような口調に、俺はもうひとつ、ため息を吐いた。


