いちごみるくと恋わずらい


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彼女が小嶋桃花という名前だということも、俺と同じ学年なのだということも、佐伯と同じクラスなのだということも、最近知った。

彼女の名前より、学年より、クラスより。

なによりも先に知っていたのは、彼女が『菊池を好き』ということだ。


部活中にときどき見かける、校庭を囲むフェンス越しにグラウンドを眺める女子生徒。

はじめは、特に気にも留めていなかった。

うちの学校はそれなりに顔が整ったやつが多いから、同じグラウンドで活動している、サッカー部やラグビー部なんかの部活を見ている女子は珍しくなかったから、彼女もそんななかのひとりなんだろうとしか思わなかった。


それなのに。

気持ちが変わるのなんて、些細なきっかけで十分だと思い知らされた。




フェンス越しに彼女の姿を見つけたその日、グラウンドで活動していたのは偶然にも俺たち陸上部だけ。


……陸上部目当てか。


珍しいな、なんてなんとなしに彼女の視線の先を追うと、ちょうど100メートルのタイムをはかっていた菊池の姿があった。