すると卯月くんは、おもむろに体勢を元に戻す。
私の顔を近い位置で覗き込んできれいな顔遠ざかっていって、思わず、ふう、と息を吐いていた。
隣をちらりと見ると、卯月くんは少し考えるような表情。
やっぱり、受験のためとかかな?
卯月くん、大学もいいとこ狙ってそうだし……。
しばしの沈黙の間、私はそんな予想を立てていたのだけど。
「……好きな人ができたから」
返ってきたのは、想像もしていなかったセリフ。
「……え?」
────ズキン。
あれ……。
今、心が軋(きし)んだ……?
「さすがにこの立場だったら、諦めもつくかと思ってさ」
「……」
佐伯くんたちがいるはずの人混みに目をやりながらの卯月くんの言葉は、苦笑交じりだった。


