転校生とは、転校初日から数日はクラスのアイドル的存在となるものである。素が良いだけに、浅倉愁にはその傾向が極めて強く現れた。


「お前、東京から来たって?」
「前に居た小学校ってー?」
休み時間になると、愁の周りには男子も女子も群がっている。


「あたし、びっくりしちゃった!」
実花が目を真ん丸くして駆けよってきた。
「なにが?」
「あの転校生くんと麻衣子が知り合いだったこと。」
「あ、私もだよ?」
成海が自分を指差して言う。

「そーなのー!?」
「世間って狭いよねー。」
「ってゆうか、まさかシュウが帰ってくるとは思わなかった。」
「ねー!あの時は皆で泣いたしねー。」
麻衣子の視線が浅倉愁に移る。
「帰ってくる?あの時?」
実花は首を傾げた。
「うん、シュウはさ、小学校低学年で転校して行っちゃったわけ。転勤転勤で、大変だったらしいけど、今はどうなんだろうね?そのお別れ会で、皆泣いたっていう、それだけ。まさか、また会うなんて。」
成海が簡単に説明した。




男子達は浅倉愁を連れて、ゾロゾロとグランドに出ていき、教室の中は急に物静かになった。





「それより。実花ー、お土産。」
、と成海が実花を催促する。
「あー!」
実花ははいはい、と言わんばかりに頷いた。