「シュウ!」
その日の昼休み、成海はシュウのクラスへ足を運び、最も使用頻度の低い階段へと連れて行った。


「なんだよー。こんなとこ呼び出して。でも、ま、成海と二人で話すのも久々だから別にいーけど。」
そう言うと、階段の中段程に腰を下ろした。

「シュウは、」
短刀直入に言おう、と成海は決めていた。本当はこんなこと、シュウに言いたくはない。だけど、変にしどろもどろ言ったところで、事をややこしくするだけだと思った。

「麻衣子のこと、どう思ってんの?」
「麻衣子?」

流石のシュウも、まさか麻衣子の名前が出るとは思わず、拍子抜けした様な表情になっていた。

「そぅ、麻衣子。麻衣子と約束したんでしょ?転向する時。」
「はぁー?約束ー?」

成海は苛々を募らせる。煮えきらないシュウの態度に。


「ずっと気持ちは変わらない。だから、帰ってくるまで、待っててって。」


途端、クスリ、と笑いを堪えるシュウが居た。
「あー…あんま覚えてねーけど、そんな気もするなー。ってか、あいつってそーゆーの本気にするタイプだっけー?おもしれ。」

たまらず、成海はシュウを睨み付けた。

「なにが可笑(おか)しいわけ?シュウはっ…麻衣子のこと、好きなんじゃないの!?」
泣きたかった。ずっとシュウを思っていた麻衣子の側にいつもいる成海だから、心から泣きたかった。
でも、ここで泣く訳にはいかなかった。