今日こそは麻衣子にずっと借りっぱなしだった漫画を返そうと、唯は忘れないうちに麻衣子を探した。
しかし。
今日は何処にも麻衣子の可愛らしい笑顔が見えなかった。
「成海ー、今日麻衣子は?」
「休みだって。」
「そう。」
普通通りの挨拶の筈(はず)なのに何処と無く嫌な雰囲気が漂った。
(成海も…なんだか今日元気が無いみたい。)
一時間目が終わってから、唯は麻衣子にメールを入れた。


外はまだしとしとと雨が降り続いていて、先週いっぱいで梅雨明けするというニュースが流れていたのに、ナントカ前線の影響で遅れているらしい。
「唯ー。次英語ー。」
どんな天候でも、気分でも、この男の子だけは常にマイペースに生きている。
「はぁ?またぁ?シュウ、あんた英語の教科書失くしたんでしょー!」
唯はぶつぶつと文句をいいながらも、まんざら嫌ではないような表情をした。
むしろ、恋をした女の子の―



此処に来て初めて成海は己の心に引っかかっていたモノに気づいた。
ずっと、何かがおかしいと思っていた。
麻衣子が帰り道のファミレスで自分にシュウへの気持ちを打ち明けた理由。
昨日、泣いていた理由。