「お疲れ様でしたー」
「立川、お疲れー」
バスケ部は、なかなかハードな部活である。しかし、その練習の甲斐あって、今年はかなりいいところまで勝ち進んでいた。
今日は意外と早く終わり、まだ空はオレンジ色の空。


「なーるっ!」
ふいに呼ばれて立川成海は立ち止まった。



声の主は誰だか分かっている。
中学二年生のわりに大人びた容姿の成海を、大抵の人は立川さん、と呼ぶ。こんな可愛らしい呼び方をするのは、あの子。


「どうしたのー?麻衣子。こんな時間まで。」
「一緒に帰ろう?」
麻衣子は成海の服を掴んだ。
「うん。」



こんな風に二人で帰るのは久しぶりかも知れない。
麻衣子が帰りに二人で帰ろうと成海を誘うときは、決まって何か相談事があるときであった。
そう、それは昔からで―
何時も成海がしっかり者の役、麻衣子は甘えん坊。


「で?どうしたの?なにかあった?」
「さすが、なるだね。」
「そりゃあね、幼稚園から一緒だとね。」
成海は笑った。


彼女達の住む町は田舎と言うには少々賑やかである。休日に皆が買い物や遊びに行けるような複合施設もあったし、最近では東西に伸びる主要道路が整備され道路の両脇には飲食店をはじめ様々な店舗が新規に開店をしていた。だからといって都会と呼べるのかも大いに疑問ではあったが。

麻衣子と成海は学校から差ほども離れていないファミレスに寄ることにした。
「それで?そろそろ教えてよ。」
「んー。」
麻衣子が若干躊躇ったような表情を見せる。



「ね、なるはさ、あたしがシュウのこと好きだったの、覚えてる?」