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「…」


あたしの目に映るのは
今では"懐かしい"、
その言葉がよく似合う

獣牙倉庫。


「そろそろ時間だね」

あたしの隣に立つ伊織は
さっきまで震えていたのが嘘のように
凛として立っている。




あたしはというと、
ドキドキと
今にでも飛び出してしまいそうに
跳ねる心臓。

さっきとは比べものにならないほど
震える手足。

そして、
ぎゅーっと締め付けられ
熱をもった喉。


「大丈夫」


そんなあたしに
伊織は微笑んでくれる。

それだけで
少しだけ、ほんの少しだけ

心が軽くなったような気がして。



一歩、踏み出したあたしは
そっと扉に手を掛けた。