「麗、」

倉庫のソファに
座っていたあたしの隣に
そっと座った伊織。

「どうしたの?」

なぜか悲しそうな顔をしていて。

「今日…、

 勝てるかな」

そう、
今日は獣牙に乗りこむ日。


不安そうにあたしを見つめる
伊織の手は
微かに震えていて。

その姿を見て、
どうしようもない罪悪感に襲われる。



「…獣牙は強いよ…」

小さく呟いたあたしを
見つめ続ける伊織。


そんな伊織を励ますように

「だけど、
 あたしたちだって強いよ」

そう言って
精一杯の笑顔を向ける。





不安なのはあたしだけじゃない、
みんな同じ。

そう分かっていても
今にでも涙は溢れてきそうで。


「ありがとう」


そんなあたしに
伊織はまだ震えている手で、


「行こう」



あたしの手を取った。