「あたしじゃ…、
 
 誰ひとり救えない。



 …お父さんも、黒龍も、

 …白龍も…っ」



結局あたしはあの日、

お父さんを失った日から
一歩も前に進めていない。


何よりも大切だった黒龍を
あたしのせいで危険な目に遭わせて

こうして離れることでしか守ることが出来ない。



そして

こんなあたしを認めてくれる、
信頼してくれる白龍に

黒龍を押し付けて、
無理やり笑顔作らせて…



「…あたしがあの時、
 
 殺されてれば、良かった……」


あの時、
お父さんじゃなくて
あたしが殺されていれば


きっと黒龍のみんな、
壮樹さんたちが後悔することもなかった。

悠さんのお父さん、
おじさんが罪悪感を抱えることもなかった。

お母さんが、お兄ちゃんが、
涙を流すこともなかった。



…お父さんの存在はとても大きくて、

それに比べてあたしはこんなにも弱い。


大切な人すら、守れない。