ホストの憂鬱

セットし終えると同時ぐらいるみはやってきた。

るみの飲み物は決まってビールだった。

「キョン、顔赤いよ」と、俺の顔を見て言った。

「営業に行ってたから」

「女の子の店に?」

「うん」

別にかくす必要もないと思ったがるみの表情はくもってしまった。

やきもちなのかな?

そう思った。

何とかるみの機嫌をなおそうと思い、俺は適当な事を口走った。

「今度、飲みにいかない?」

「女の子の店なんていかない」

そうとうこだわってるみたいだ。

「違うよ、居酒屋でもメンズでもいいし」

「わお、行く」と言ったるみの表情は少しだけ、嬉しそうだった。

わお、るみの口癖だ。

びっくりしたときだけじゃなく、うれしい時もムカついたときにも『わお』の一言で表現している。

「いつ?」

「いつでもいいよ」

「明日」

「明日はだめだよ」

「やっぱり。飲み屋は嘘つきだ」

るみはそういうとまたふて腐れた表情をした。

「明日はオーナーの誕生日だから、明後日に」

「わお」

それしかこたえないるみだけど、表情をみると、うらぎれないと思った。