お向かいさんに恋をして

「いいんだよぉ。わたしはね、嬉しいよ。

昔はね、こうやってよく若いアパートの人たちが、うちに遊びに来てくれたもんさぁ。
皆でご飯食べたりお花見をしたりしたんだよぉ。

最近そういうのめっきりなくってねぇ」

「やだぁ、おばぁちゃん。
あたし時々来てるじゃない！」

「留奈ちゃんだけじゃないかぁ」

こうやって何人もいて賑やかなのが、いいんだよ、と、大家のおばあさんさんは笑った。

「あ、そうでした。
今日はお花見だと伺ったのですが……」

「あ、ごめんよ。ちょっと待っててなぁ」

秋中さんの言葉に、大家さんは立ち上がって、カーテンを開けた。

わぁぁっ！

素敵なお庭に、大きな桜の木が１本。
立派だなぁ。
満開の桜に、思わず見入ってしまう。