お向かいさんに恋をして

「失礼、します」

「こんな時間に、ご迷惑では……」

おばあさんは優しくと笑う。

「そんな固くならんと、くつろいでっておくれ」

「そうだよ~? 二人共~」

居間に上がり込んでビールのプルタブを倒しながら、留奈さんはこちらに手招きをしている。

「さすが留奈さん、驚く程の図々しさです……」

「彼女は、普段からこんな感じなのかい?」

「そのようです……」

小声で話しながら廊下を進む私たちを、大家のおばあさんが優しい面持ちで見守っていた。

「いやぁ、賑やかで楽しいねぇ、昔を思い出すねぇ」

「さすがおばぁちゃん、この煮物チョー美味しい!」

「あの、でも本当に良かったんですか?
突然押しかけてしまって……」

ニコニコ顔の大家のおばあさんさんの隣で、留奈さんは実家にでもいるように寛いだ様子で料理をつついている。

その向かいで、私と秋中さんは苦笑いを浮かべていた。