お向かいさんに恋をして

「いらっしゃいませ……って、あれっ？！」

留奈さんを先頭に、行きつけだと言うお店の暖簾をくぐった。

入ってすぐのレジの中から顔を上げて、目を見開いた男の子。
それは……。

「あ、安達くん？」

「あれ？ 安達が働いてる居酒屋ってここだっけ？」

私ときなこちゃんが背後から彼に口々に質問を投げるも、留奈さんはそれを気にとめることなく予約の確認をした。

「あら安達くん、今日振りっ 奇遇ね！
三人で予約した竹井よ」

安達くんは慌てて手元のリストを目で追った。

「あ、ああ。個室予約の竹井さま……？」

「そう、それっ！」

じゃ、宜しくね、とひらひら手を振りながら、留奈さんは安達くんの案内より先に歩きだした。慌ててメニューみ手に留奈さんを追いかける安達くんに続く。
さすが行きつけているだけはある。留奈さんは個室の場所を把握していたのだった。