お向かいさんに恋をして

私はあのほろ苦く、忘れられない事件を思い出していた。

「……あっ!
留奈さんと話してる時に、鍛えてるって言ってましたもんね!
安達君の実家の道場だったんですねっ!
わぁっ! これもご縁ですねっ」

「ははっ。そうだね」

初対面の人ではなく、日野さんだと分かった私は面白いご縁に嬉しくなり、日野さんと笑顔で会話をしていた。

そこへ安達君が割り込んで来た。

「面白くねぇっ!」

えぇ? いきなりなに? なぜ不機嫌?

「あ、そうそう波江さん」

急に不機嫌な安達君を華麗にスルーした日野さんが続ける。

「竹井もその辺にいるよ、
さっき見かけて話したんだ。」

「え、留奈さんも来てるんですかっ?!」

「多分あの辺かな?」

日野さんが指差してくれた辺りを目を凝らしてみる。