「この国は…もはや名だけに過ぎない。
先代の王ーー私の父が生まれる前から、徐々にこの国は失われつつあった。」
近くなった海は岸壁を削り、民を城壁へと近づけた。
人々は崩れゆく祖国に留まろうと必死にしがみついたが、圧倒的な自然の前ではあまりにも非力だった。
「私は父の死後、少しずつ民を国外へと避難させた。隣国、そう…ザルバ王が統治するカナルキトニスに。
…国民に目もくれない彼の事だ。
案の定少し人口が増えても気づきやしなかった。」
皮肉げに王は笑った。
遠くの海を見て、かつて栄えていた街を懐かしむようにそっと、俯いた。
「本当は民を…カナルキトニスなどに渡したくはなかった。だが船で海を超えるには危険が伴う。一国の民を受け入れてくれる国も多くはない。
こうするしか…方法はなかった。」

