幸せはいつだってそこに

「じゃあまず、役割を決めていきましょうか」
小さな会社の小さな会議室での会議が始まった。
「カップルへの接客は、小鳥遊君とハルちゃん、2人でお願いね」
「はい‼︎」
純也は張り切って返事をした。
「えぇー、なんであたしが純也となんですか⁉︎嫌ですよ絶対‼︎」
榛名の猛烈な拒否反応に半ば苦笑しつつ純也は梨花に視点を移す。
「ハルちゃん、これは社長命令よっ。上手くやってくれたら…、この前欲しがってた指輪あげるのになぁ〜」
「やる!やります‼︎是非やらせてください‼︎」
榛名は勢い良く椅子から立ち上がり純也に言い放った。
「純也‼︎今回は特別に組んであげるわ。あんたヘマしたらマジでつるしあげるからね⁉︎」
「はいはい」
「はいは一回でいいっつの!わかったら書類印刷するから手伝いなさいっ」
純也は飛び出していく榛名に続いて会議室を後にした。
「ふぅーっほんとジュンも慣れたもんだよな。吉良さん呼びは変わってないにせよ榛名の暴言に対して受け流すのが上手くなったよ」
笑いながら真野が梨花の方を向いた。
「ほんとよね。最初はどうなるかと思ったけどなんとかなりそうでよかったわ」
「だなっ、んで俺はどうすればいいんだ?」
「真野君にはお客様とドレススタイリストさん、あとヘアメイクアーティストさんとの橋渡し役と、式場が決まり次第近くのレストランでの料理の注文をお願いするわ」
「了解っ」
「胡桃沢君は、装飾に使う造花やその他装飾品の注文をお願い」
会議室でも相変わらず端っこで背中を丸くしていた剣人が顔を上げずり落ちたメガネを押し上げた。
「了解しました…」
それぞれが自分の仕事を始めるため会議室を出ていく中、梨花1人だけが残った。
梨花はスーツの胸ポケットから1枚の小さな写真を取り出して、
「蓮…、あたし頑張るわ…」
そう小さく呟いた。