それ以来、私は荒木由奈と仲がいい。
最初は、みんなの中心で騒いでる人が私なんか相手してくれるわけがないと思ってた。私もそんな彼女に少し苦手意識を持っていた。
でも、荒木由奈は私の気持ちを分かろうとしてくれた。
結局私は今まで「私なんか」って言って諦めてただけだったのかもしれない…。
そのうち、お互いの呼び名は「仁香」「由奈」になっていった。
「にーいか!お弁当食べよ!」
「うん。今日はどこで食べよっか?」
「やっぱ屋上とか!?」
「由奈はいっつもそこなんだから。まぁいいけどね。」
「やったー!」
こうやって何気ない会話をするのが楽しくてたまらない。
あんなに嫌だった「仁香」と呼ばれることも、今では呼ばれると嬉しくなる。自分の名前がやっと好きになれてきた。
私なんかがこんなに楽しい学校生活を送っていいのだろうか…と思うくらい、
幸せだった。
そんな春の日。
