「なっ…なせ…」
「槙原。」
名前を呼ぶと、槙原は今にも泣き出しそうな顔をして俺を見てきた。
悪いが、ここではっきりさせねぇとな…
「槙原の気持ちは嬉しいけど、俺くるみにベタ惚れなんだよ。ごめん。」
俺ってこんなこと言う奴だったっけ。
不覚にも、そう思ってしまった。
「…あたしじゃ…ダメなの…?」
「俺はくるみじゃなきゃ…ダメなんだ。」
ふと、腰あたりに違和感を感じた。
少し振り返ると、くるみが俺のジャケットの裾をキュッと握っていた。
それに応えるように俺はその手を握った。
くるみの手がビクッとしたのがわかる。

