「……だよね、無理だよね。
いきなり悪かったね、細井さん。
いつも通り10時出勤してください」
どんどん落ち込んでいく本多聞マネージャー。
一人でペラペラと話したあげく、
もう電話を切ろうとしている。
どうにか17時出勤できる方法はないのか………
誰かかれんを預かってくれないだろうか、
誰か……誰か………
あっ!!!
「……それじゃぁ細井さん、また後で…」
「本多聞マネージャー!!!!」
解決策を見つけた私は、電話を切ろうとする本多聞マネージャーの言葉を遮った。
「……ど、どうしたの?」
勢いよく発した私に少し驚き気味の本多聞マネージャー。
でもそれも、無理もないんだ。
なんたって解決策が出たんだから!!
「本多聞マネージャー、私17時出勤できます!!
かれんは兄夫婦に預かってもらえば大丈夫ですから!」
そう。
兄夫婦に預かってもらえば良いの。
兄の妻の繭(まゆ)さんは不妊症で子供がいない。
不妊治療中だが未だに効果は現れない。
そんな繭さんだから、
いつもよろこんでかれんを預かってくれるのだ。
「……細井さん、本当に大丈夫?」
再度確認をしてくる本多聞マネージャー、
私が頷くとは思ってなかったのだろう。
本当に無理を承知だったんだな。
「大丈夫ですよ!任せてください!!」
この決断が、これから私の運命の歯車を狂わすなんて
思いもしてなかった。
