( 荒れる海辺に立つ三人 )
 
 海に出艇していく幸弘。
ウインド・サーフィンのエキスパートの彼の凄技
(フォワード・ループ、バック・ループ、キリスト・エアー等)

が次々にさくれつする。

幸は驚いてはしゃぐ。

「すごーい!パパすごい格好いいね、弘。」

弘はしゃくだがすごいと認めるように無言でうなずく。

岸に幸弘が戻って来る。


( 別の穏やかな海岸 )
 
 幸弘が初心者用のボードで弘にコーチしている。

それを水着の幸が見守っている。

「だから、右手がブームの根元で左手クロスで・・・」

バランスを崩し海に落ちる弘。

ムッとしながらボードに上がる弘。

笑いをかみ殺しながら幸が見ている。

「そう、右手が根元で左手クロスで右手でブームを・・・」

波でボードが揺れ、また海に落ちる弘。

「・・・ほんっと鈍いな、お前。」

ここで今まで我慢していた弘がとうとう切れる。

「うるせーよ!誰も教えてくれなんて頼んでないだろうが!

やいやい言うから来てやったのに鈍いってなんだよ!

やってられるか!こんなもの!バカヤロー!!」

怒って海から上がっていく弘。

転がって来た他人のビーチボールを思いっきり蹴っ飛ばし車に向かう。

顔を見合わせる幸弘と幸。

「あんな事ぐらいで怒る・・・かな?」

「怒る・・・でしょう・・・普通は・・・うん。」

「そっか・・・まずったな・・・」

幸弘はボードの上に上がり海に背中から仰向けに落ちる。