( マンションのリビング )
 
 土曜日の午後、幸弘が幸、弘に話しかける。

「なぁ、明日の日曜、ウインド・サーフィンに行かないか?」

幸は即、食いついてきたが、弘の反応は鈍かった。

「えぇー!パパそんなの出来るの?すごい、すごい。私行きたい!」

「・・・俺は行かない。」

「すげぇ、楽しいぜ。一度やってみなよ。」

「いいよ。俺は・・・」

「初心者用の道具持って行くからどんくさくったって大丈夫だぜ。」

「誰がどんくさいんだよ?楽勝だぜ。そんなもの!」

「じゃぁ、決まりだな。」

そこで幸が張り切って

「あたし、お弁当作る!」

と台所へ。

幸弘が弘にたずねる。

「食えるのか、それ?」

弘はしかめっ面で首を振る。

幸弘がつぶやく。

「・・・そんなに・・・?」

弘はうなずきながら

「『即死、ギリギリセーフ』ってとこだな。」

幸弘はあわてながら

「幸ちゃーん、

連れて行きたい店が有るから弁当用意しなくていいよ。」

「えぇ~」