あれから五条と会わないまま、夏休みが明けた。



いつもなら夏休みは勉強に励むのだが、あれ以来鉛筆をあまり持たなくなった。




どちらかというと本を手に取るようになった。




恋愛小説だったり、姉ちゃんが持ってた雑誌だったり。




そしてふと、五条も図書館で恋愛小説を借りていたなと思ったりして、残りの夏休みを過ごした。










「えー、皆さん。夏休みが終わりましたが、ダラダラせずに過ごしましょうね!」





教卓の前で藤田先生がにこりと微笑みながら朝のHRで言った。



久しぶりの藤田先生だ。



ちょっと焼けたんじゃない?





そんなことを何気無く思っていると、藤田先生と目が合った。





「あまり夏休み気分では授業に取り組めませんよね……ふうむ」





と、考える素振りをしているが、先生の中ではこのあとなにをするかなんて決まっているのだろう。





「目を覚ますためにも、席替えしましょうか」





席替え……?



きょとんとしたのは私だけではなかったようで、美景ちゃんも藤田先生をガン見している。




席替えで目が覚めるの?





「席替えだ!」
「誰と隣かなー」
「先生ー、くじ引きですか?」
「くじ引きでいいだろ」
「誰と隣でも文句ないしな」




このクラスは本当に素晴らしいと私は思っている。





「虎ー、お前は雪女と隣がいいんだろ!」





立松……。



ちゃかす立松を、呆れた目で眺めてながら、ちらっと五条のほうを見てみる。





前まではこんなの対して気にも止めず、また立松がなんか言ってる、としか思わなかったのに、五条を意識するとダメだ。




このあと、どんな反応を五条がするのか。




それだけが気になってしまう。