虎と雪女

「球技大会は学年でやるということは知ってるね?」

「はい。そりゃあ1年生と6年生が混ざってやったら可哀相ですもんね」




周囲はざわざわと隣のクラスにまで聞こえる声量で話し始めたので先生が「もうちょっと静かにな」と釘をさした。




「先生たち1組は全員参加で2、3組はそれぞれ2人ずつ抜けるらしい」

「結構参加するんですねえ」

「夏休み前だからね、思いっきり遊びたいんだよ」



五条が良い例か、と後ろを振り向いているとなにやら顔を歪めている五条とばっちり目が合った。

少し怖かったので慌てて先生のほうを向いた。


びっくりした。




「ふふ、さすが五条くんだね」

「なにがです?」

「うーん、こっちの話」




優しく細められた瞳は私と五条を交互に見やった。



「なんていうのかな....先生のクラスは人数制限ないんだけど、他のクラスはあるみたいで」

「どういうことです?」

「1組が先に種目を決めて、後で2、3組が決めるんだよ」

「なるほど....1組優先なんですね。一体なん...」




一体なんでですか?


そう聞こうとしてなんとなく分かった。


先生絡みだと。



藤田先生は優しいから他の先生を色々な面で助けてあげている。

だから他の先生からの恩返しのようなものだというわけか。



「なるほど」と呟いた私に「察しがいいね」なんて苦笑いされた。




「僕はそんなつもりはなかったんだけどね」

「それ生徒の私に話してよかった内容なんですか?」




駄目だったんじゃ...。



「内緒にしててくれ!」

「もちろんそうしますよ」



先生との秘密ができた。