虎と雪女

黒板には”バレー”、”バスケ”、”ドッジ”の文字が書かれていた。



「この3つの中から好きなのを選んでくれー。5分時間を取るから友達と考えるなり好きにしろー」



友達と考えろ、なんて言ってくれる先生が他にいるだろうか。


「他人に合わせるな」「自分の意思で決めろ」そう言う先生を見てきた私にとっては藤田先生が輝いて見えた。



やっぱり小学生のうちは仲の良い子と遊んで思い出を作りたいんだよね。


こういう友達と悩んだりするのだって、良い思いでになるし...。


って、なんか私ババくさいか。




「佐々原はなににするんだ?」




私が1人で誰とも話さずにいたからか、先生が声をかけてくれた。

こういう気遣いもできるんだよね。




「私は特に.....先生ちょっと聞いてもいいですか?」

「なんだ?」




眼鏡の奥にある目が優しく細められた。



「これってどうやって3つに分けるんですか?やりたいものがあるにしろ、人数制限がありますよね。そこのところはどうやって決めるんですか?」



私が言ったことが予想外だったのか、「え!?」と声を上げて苦笑された。




「佐々原はそういう子だったね」

「それは差別ですか?」

「い、いや断じてそんなことはないよ!!」

「冗談ですよ」




わたわたと慌てる姿が新人を物語っている。




「なかなか鋭いことを言うねえ」

「で、どうなんですか?私的には競技よりもそっちのほうが気になります」




あはは、と先生はしゃがんで私と同じ目線に合わせてくれた。