虎と雪女




水中は思うように進まないので、ゆっくりゆっくり歩きながら目の前まで来た。




「……なに?」





美景ちゃんが私の前に立って、低めの声で言った。



周りははしゃぐ児童でいっぱいなのに、美景ちゃんの声がちゃんと聞こえるのは、それほど2人に集中してるということだろうか。




他人事のように、花本さんにはそこまで関心がないのに。





「誰あんた」

「誰でもいいでしょ」

「優はそこの佐々原さんに用があるんだよ」

「用事ならウチが聞くけど?」

「は?いらないんだけど」





バチバチと火花を散らす2人に、立松は「女子怖えぇ」と言いながら私のほうに寄ってきた。




いやいや、普通ここは男の立松がなんとかする場面じゃないの。




……立松じゃなくて、当事者の私がなんとかすべき場面か。





「雪ちゃんに話しかけるにはウチに許可取って」

「あんたに関係ないでしょ」

「ウチは雪ちゃんの親友なの」





み、美景ちゃん……。

親友、というその言葉にじーんときた。





「へー、類は友っていうのはこれをいうんだ」





ハッ、と馬鹿にしたように鼻で笑う花本さん。


しかし、その表情こそ見ていると滑稽だと思うのは私だけじゃないよね。




「ブスは友を呼ぶってね」




そう言った花本さんに、私は少なからずイラッときた。



美景ちゃんは「このッ……!」と今にも喧嘩しそうな勢い。



私も美景ちゃんを押し退けて、文句を言おうとしたそのときだった。