虎と雪女






翌日の1時間目は球技大会のことについてだった。


なにも1時間使わなくったって、と思ったがどうやらこのクラスは全員参加。



それに授業だってほかのクラスより進んでいるということもあり、1時間くらい消費したって別に問題がないようだ。



「じゃあ今から球技大会について話し合うぞー」




担任の藤田先生が楽しそうに黒板の前に立った。

この先生は面倒見が良く、お父さん臭がするので生徒からも保護者からも信頼・人気のある先生だ。


校内アンケートを取ると絶対上位にくい込むだろうと私は予測している。



「おーい、佐々原。今の時間くらい勉強はやめろー」



私は机の上に参考書とノートを出し、鉛筆を持って、いかにも今から勉強に励みますという体勢だった。



「すみません」



一言だけ謝って机から物を仕舞う。



「げえっ、こんな時も勉強かよ雪女ー」

「なに、五条」

「キョウチョウセイのないやつだなあ」



教卓に近い席の私と教卓から遠い席の五条。

私は後ろを振り向いて五条を見た。



協調性、と最近覚えた言葉を使いドヤ顔している五条に呆れた。



「まあまあ。じゃあ決めるぞー」



先生がチョークを取り出し、カツカツと黒板に書いていく姿を見ながらこういうお父さんだったら楽しそうだなあ、なんて思う。