虎と雪女

「じゃあさ、お前に頼みがあんだけど」

「なに」

「雪女頭良いよな」

「頭の良いっていう基準が分からないけど、小4にしては良いほうだと思うよ」





五条が私に頼みなんて珍しい。

なんだろ。




「俺に勉強教えてくんね?」

「なんで」

「なんでって........」




こいつ、自主的に勉強したいなんて言うやつだったかな。


いつも外で遊び回って、授業中も寝るか遊ぶかのどっちかのやつだったような。


その五条が勉強教えてほしいだなんて。


どうかしたのか、こいつは。


邪険になるのも仕方ない。




「いや、その....なんつうか........そう!親に言われたんだよ。テストで良い点数取らないと塾に行かせるって」




今閃きました!って感じがしたんだけど、気のせい?


腕組みしながらうんうん、と頷いている五条を横目に私は鉛筆でガリガリと答えを書いていく。



「おい、聞いてんのか」

「聞いてるよ。塾行けばいいじゃん」

「嫌だ。遊ぶ時間が減るだろ」

「私が教えるのも時間かかるけど?」




ああ言えばこう言う。



「俺はお前に教えてもらいたいんだよ!!」



くぐああああ、と叫ぶ五条にピタリと動きを停止させる。


どんな反応をすればいいんだか。




「雪女は塾行かないのかよ」

「塾行くより自分でやったほうが手っ取り早いし。金かけてまで他人に教わろうとは思わない」

「へーへー。頭の良い奴は考えることが違うよな」




人に勉強教えるのは嫌いじゃないし、自分のはいつでもできる。

しかしこいつは要領悪そうだし、確かに塾に行かざるをえない。




「いいよ、教えてあげる」

「まじか!!じゃあ早速明日からな!」

「いつやる?」

「放課後!」




皆が帰った後な!と言いながら奴は去っていった。


足の速い奴。