虎と雪女

放課後、私はいつものように学校に残って勉強をしていた。



教室には私1人。



ランドセルを隣の机の上に置いてガリガリと勉強している。



すると、扉が開いた音がした。




「あ、雪女まだいたのか」

「なんだ五条か」




鉛筆を持つ手を止めて音のするほうを見ると五条だった。


てっきり先生かと思った。




「なんだお前。勉強してんのか」




眉間にしわを寄せて私の机まで来た五条は教科書とノートを見るなり「うげー」と声を漏らした。



失礼なやつだな。



「なんで戻ってきたの、五条」

「忘れもんだよ。これ忘れたんだ」




そう言って手にぶら下げているのは体操服。

指定の青い袋をぶらぶら揺らしながら見せてくる五条。



「お前はこんな時期まで勉強してなにが楽しいんだよ」

「分からないことが分かっていくのが楽しい」

「わっかんねえやつ」

「まだまだ子供だな、五条は」

「ケッ........ってそれ、本当に教科書?」




ランドセルが置いてないほうの隣の席に座り、覗き込んでくる。



「いや、問題集だけど」

「これ習ってないぞ」

「高校受験対策用だから当たり前。てか習ったとか習ってないとか分かるんだ、五条のクセに」



五条のほうを向いてクスリと笑ってやると口を尖らせそっぽを向いていた。

こういうときは可愛いよね、モテるの分かる。